グローバル引きこもり的ブログ

「Common Lispと関数型プログラミングの基礎」というプログラミングの本を書いてます。他に「引きこもりが教える! 自由に生きるための英語学習法」という英語学習の本も書いています。メール → acc4297gアットマークgmail.com

みんな選択肢を増やそうとして生きているけれども、選択肢というのは増えるものなんだろうか

人間の行動の基準として選択肢を増やすような行動をする、というものがある。

たとえば、教育などは特にそうで、親からみたらば子供の学歴が高いほうが人生の選択肢が広がるような気がする。

高学歴で人生の選択肢がたくさんあると、そのなかで一番有利な選択肢を選ぶことができるから成功するに違いない、という発想だ。

その上、子供が高学歴だと周りに見栄をはれるから、世の中で子供の教育にキチガイみたいになる人が多いのは理解ができる。

しかし、教育によって本当に人生の選択肢は増えているんだろうか?

例えば、医学部を卒業しないともちろん医者にはなれないが、医学部を卒業したあと土木作業員になり、そのまま土木作業員として一生を送る、ということは理屈の上では可能である。

でも、現実的に医学部を卒業した後で医者になるという以外の選択肢をとることは難しい。

医学部に進学した時点で、普通は医者以外になるという選択肢は消えている。

もちろん、医学部というのは医者になるために(あるいは医学者になることを目指して)進学するものだから、それ以外のそれ以外の進路が無くなっても何の問題もない。

それに、医学部に入学した後で何を専門として生きていくか、ということについては膨大な量の選択肢があるわけで、選べる選択肢が少なくて困る、ということはありえない。

しかし、職業の選択という観点から見ると、医学部に入っても選択肢は全然増えていない。

増えてないどころか、それ以外の選択肢はなくなっている。

もちろん医学部は極端な例だけれども、高偏差値の大学に進学をしたとしても話は同じようなものだ。

偏差値が75の学部に進学したとしても、就職の際に偏差値が30というか低すぎて測定不能な学力の人がつく職業から、偏差値が75の人がつくような職業までの中から好きな職業を選ぶ、というわけにはいかない。

偏差値を75までもっていって、偏差値75の学部で教育を受ける過程で、偏差値30の世界で生きる力はなくなってしまっている。

だから、選択肢を増やすというのは、選択肢を増やすというよりはむしろ選択肢を置き換える、というのが正確な言い方だろう。

パチ屋になるか土木作業員になるか配管工になるか、というような選択肢に代わって、循環器のほうに行くか、消化器のほうに行くか、それとも基礎医学の研究者になるか、という、(世間ではもっと魅力的だと思われている)選択肢を入手する、ということだ。

一般に、選択肢を増やせばその分だけ他の選択肢はなくなる。

このことは注意したほうがいいと思う。

 電子出版した本

Common Lispと関数型プログラミングの基礎

Common Lispと関数型プログラミングの基礎

 

多分、世界で一番簡単なプログラミングの入門書です。プログラミングの入門書というのは文法が分かるだけで、プログラムをするというのはどういう事なのかさっぱりわからないものがほとんどですが、この本はHTMLファイルの生成、3Dアニメーション、楕円軌道の計算、 LISPコンパイラ(というよりLISPプログラムをPostScriptに変換するトランスレーター)、LZハフマン圧縮までやります。これを読めばゼロから初めて、実際に意味のあるプログラムをどうやって作っていけばいいかまで分かると思います。外部ライブラリーは使っていません。

世間は英語英語と煽りまくりですけれども、じゃあ具体的に英語をどうするのか?というと情報がぜんぜんないんですよね。なんだかやたら非効率だったり、全然意味のない精神論が多いです。この本には僕が英語を勉強した時の方法が全部書いてあります。この本の情報だけで、読む・書く・聞く・話すは一通り出来るようになると思います。

北朝鮮のミサイル開発と「宇宙事業」

北朝鮮の核開発と並んで世間で問題になっているのは北朝鮮のミサイル技術の進歩である。

核というのは核をターゲットまで運ぶ手段がないと意味がないので、ミサイル技術がないと核があっても意味がない。

だから、核開発とミサイル技術の発達は同時にやらないといけない。

西側諸国が北朝鮮を甘く見ていたのはこのミサイル技術に関する技術的な問題を解決をするのは無理だろう、と高をくくっていたからだった。

ところが報道の通り、北朝鮮のミサイル技術の進歩は素晴らしく、北朝鮮は必要なミサイル技術を持っているか、もし今の時点で持っていなくても必要なミサイル技術を入手するのは時間の問題である。

それで、北朝鮮のミサイルについて報道に関して思うのは、今のテクノロジーを使えばミサイルというのは本当にだれでも作れるものなんだなあ、ということだ。

ミサイルというと、あたかも最先端技術を独占した先進国しか作れないものだというイメージがある。

しかし、考えてみれば核兵器と同様、大陸弾道ミサイルというのは50年前の大型コンピューター室でオープンリールがクルクル回っている時代の超レトロな技術なわけで、北朝鮮でも作れるのは当たり前なのだ。

北朝鮮の報道を聞いて、僕は堀江貴文氏の宇宙事業の話を思い出した。

堀江氏がいうには、今のスマートフォン(だったか)に乗っているジャイロスコープというのは、昔のロケットに載っていた一つ数千万のジャイロスコープと同じ性能があるのだという。

ジャイロスコープだけでなく、ロケットを作るのに必要な技術も今の時代相当に安くなっているわけで、ロケットというのは今の時代だれでも(当然北朝鮮人にも)作れるものなのだ。

そして、ロケットとミサイルというのは、目的が異なるだけで使っている技術は同じである。

だから、そこらへんの工学部の学生でも、意欲とカネさえあれば、たとえばワシントンDCを攻撃できるようなミサイルを開発できるだろう。

たぶん、真面目にやれば僕でも開発できると思う。

なにせ32ビットのマイクロプロセッサーが200円で売っている時代だ。

秋月に売っている電子部品にも、ミサイルを作るのに使えるものはたくさんあるはずだ。

akizukidenshi.com

だから、ミサイルというと日常とはかけ離れたもののように聞こえるが、そんなのは「大学対抗ミサイルコンテスト」みたいに、ミサイルを開発するという文化がないだけの話なのである。

僕は正直、いままでVoyagerプロジェクトに関心があったくらいで、宇宙とかロケットにはなんの興味もなかった。

しかし、民間人がミサイルを開発できるとなると、いままで興味がなかった話でもなんだかものすごい興味深いもののように思えてくる。

今の時代はそういう、ものすごいいろいろなことが出来る時代だということを、北朝鮮のミサイルははっきりと示している。

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Common Lispと関数型プログラミングの基礎

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中国もロシアも核兵器を持っているのに、なんで北朝鮮の核に限って問題なのかよくわからない

北朝鮮の核に関して、一時はもしかして戦争が起きるのではないか、という雰囲気があったけれども、結局どうやら北朝鮮が何をしようが戦争が起きることはなさそうだ。

アメリカ人の発言も、もう現実的には軍事行動は不可能であることを認めるようなものになっている。

ICBMがあってもなくても、核というのは例えば空母などに落とすというような使い方もできるので、北朝鮮が核の開発に成功したらそれで終わりなのである。

そういうわけで、戦争が始まるかわりに極東アジアで始まったのは核による冷戦状態、つまり世間では「平和」といわれるもので、状況は急速に鎮静化し始めているように見える。

ニュースで話題になっているのもアメリカが地球温暖化の協定から脱退するというニュースや、ロンドンでテロが起きて7人が亡くなったというようなことで、一部の人を除いては、もうだれも北朝鮮核兵器なんて気にしていない。

アメリカ人が長いこと北朝鮮の核を放置しておいたのも、初めからこうなる事がわかっていたからだろう。

それにしても、こういう風に事態が沈静化してみると、いったいどういう意味で北朝鮮の核が問題なのかよくわからなくなってくる。

核ならば中国やロシアだってもっている。

これらの国は簡単に日本を殲滅するだけの核兵器を持っているが、日本人はこれらの国が核兵器を持っている事を完全に忘れてしまっている。

たとえば近年、日本と中国との間では領有権をめぐって緊張状態が続いているが、領土問題が原因で中国が東京に核兵器を投下するだろうと考える日本人はいないだろう。

つまり、日本にとって中国は明らかに脅威なのだが、中国の核兵器は脅威であるとはみなされていない。

なのに、なぜ北朝鮮の核は脅威なのだろうか。

北朝鮮がいろいろと迷惑な事をしているのは確かだけれども、北朝鮮が世界の脅威であるというのはちょっと表現がずれているような気がする。

北朝鮮が世界に要求しているのは体制の存続だけで、ほかには何の要求もしていない。

日本や西側諸国との間に(核兵器の問題は別として)大きな争いがあるわけでもない。

別に北朝鮮が核を持ったからと言って、そのうちに北朝鮮が侵略をしてくるわけでもないのである。

そういう意味では北朝鮮の立場は同じように(もっとも、こちらは西側諸国の支援の下で)核を保有しているイスラエルみたいなものと考えてよいだろう。

たしかに北朝鮮が核を持った事で複雑な話がますます複雑になるかもしれない。

しかし、よく考えてみると、北朝鮮の核のために何が変わるかというと変わりそうな事はあまりないというか、ある意味では状況がそのためにますます変わらなくなったとも言える(そしてそれが北朝鮮の狙いである)。

もちろん、北朝鮮がこれからどうなるかは中国人の意向次第だが、結局は、厳しい経済制裁と引き換えに北朝鮮の体制の存続は認める、という、国際社会がこれまで演じてきたプロレスが続くだけのように思える。

各国の政治家が北朝鮮の核の脅威を大声で言うのもこのプロレスの一環であるという側面が大きいのではないだろうか。

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経産省のレポートとネットでの反響

例の経産省による「不安な個人 立ちすくむ国家」というレポートは、女性職員が中心となったプロジェクトということもあり、この手の資料としては異例の反響を呼んだ。

僕もこれについてエントリーを3つ書いた。

globalizer-ja.hatenablog.com

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一番最初のエントリーは、「不安な個人 立ちすくむ国家」と検索するとトップページに載ったこともあり、だいたいいままで2,000人くらいに読まれたと思う。

これらの2,000人がどのような人で、僕のエントリーを読んでどのような事を考えたのかは分からない。

しかし、わざわざこういう意識高い話題について検索をするくらいだから、基本的には業界の人か、高学歴・高収入の人が多いだろう。

経産省の職員にも僕のエントリーを読んだ人がいるはずだ。

そう考えたら、2,000人は2,000人でも、どうでもいい芸能ネタを書いて2,000アクセスというのとはそれなりに意味合いが違うともいえる。

 

しかし、そうとはいっても、2,000人というのが日本社会ではごく一部の人間に限定されているというのが事実であるのも確かである。

それはブログをやっている人の反応を見てもそう思う。

僕も検索をして他の人がこのレポートについてどういうことを書いているのかいろいろ読んでみたけれども、意外とブログで取り上げている人がすくないなあ、というのが正直な所だ。

ざっと検索をしてみても、これについて書いているのはせいぜい20人かそこらだった。

経産省の人も、もう少しエントリーを書く人がいると思ったけどなあ、と思っているのではないだろうか。

 

一方、Twitterではもう少し話題になっており、政治的なアカウントで一言二言このレポートについて言及したアカウントはかなりあったと思う。

まあ、知名度がない人間がブログで政治について語っても誰も読まないので、政治に関する言論がTwitter中心に行われるのは無理もない。

ブログというのは、読まれない割りに書くのが大変だし、書くこと自体に危険がある。

だから政治に関する言論がTwitter中心になるのは仕方がないが、なんか改めて、ある種のウェブの薄っぺらさを感じざるを得なかった。

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経産省が教育の自由化を言わないのはおかしい

最近話題になった経産省のペーパーには、「意欲と能力のある人が公を担う」など、これからの社会は国民が自発的に公的な役割を果たすべきだという主張がある。

http://www.meti.go.jp/committee/summary/eic0009/pdf/020_02_00.pdf

それによって国は緊縮ができて、国民は社会参加することによっていきいきとした人生を生きることができるからみんなハッピーではないか、ということらしい。

誠に結構な主張だと思う。

結構な主張だと思うが、「意欲と能力のある人が公を担う」といいながら、このペーパーで教育の自由化が一切取り上げられていないように見えるのは何故だろうか。

 

僕は日本の教育のかなりの部分がありがた迷惑の公共事業なのではないかと思う。

教育というとなんだか無条件によいものだという人がおおいのだが、教育のもつマイナスの影響はもっと注目されてよい。

教育を普及させれば世の中がうまくいくならば苦労はない。

教育を受けるほど可能性が広がるなんてとんでもないウソで、ふつうは教育を受けるほど特定の生き方しかできなくなる。

その特定の生き方が成功ならばそれでいいが、それに失敗したら最悪で、過去に受けた教育が負債となってのしかかって来る。

教育にたいして国民全体が払っているコストと国民全体がうけとる教育のメリットを比較すると、もうコストの方が上回っていると思う。

 

今の教育のコストは明らかに高すぎる。

なんでこの程度の事を学ぶためにこんなに時間がかかるのだろう。

なんでこの程度の事を学ぶためにこんなにカネがかかるのだろう。

しかも学校でこけたらたちまち減点で、それは一生ついて回る。

もはや教育は日本社会の停滞の一大要因となっているといっていい。

それで、なんで教育が今のようなものであるのかというと、教育がダメな公共事業みたいになっていることに問題がある。

 

残念ながら、この経産省の資料からはこのような問題意識は全く見られない。

ただ次世代に投資せよと主張するだけで、はっきり言ってなにも考えていない。

なんだかおかしいのではないか?

政治家や官僚は、財政ガーと緊縮政策を主張するが、教育こそ大幅に切り下げるべき分野である。

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世間は英語英語と煽りまくりですけれども、じゃあ具体的に英語をどうするのか?というと情報がぜんぜんないんですよね。なんだかやたら非効率だったり、全然意味のない精神論が多いです。この本には僕が英語を勉強した時の方法が全部書いてあります。この本の情報だけで、読む・書く・聞く・話すは一通り出来るようになると思います。

経産省のメディアに対する認識はおかしくないか?

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先ほどは経産省の「不安な個人 立ちすくむ国家」というペーパーについて取り上げたが、違和感を感じる部分は他にもある。

http://www.meti.go.jp/committee/summary/eic0009/pdf/020_02_00.pdf

たとえば、このレポートではフェイクニュースを取り上げ、「自分で情報を選び、自分で決断しているつもりが・・・実際には与えられた情報に踊らされている?」などと、エスタブリッシュメントとは異なった判断をする有権者を批判している。

しかし、僕は経産省がフェイクニュースについて取り上げるのはものすごい変だと思った。

というのは、経産省は「5重の壁」とか言いながら、原発というのは絶対に安全である、というフェイクニュースを何十年にもわたって垂れ流し続け、その結果原発を爆発させて日本国に何百兆円もの損害をもたらした張本人であるからだ。

その当時の経産省からすれば、原発が絶対に安全であるというのはファクトであり、反原発運動をする人間がいう事はすべてフェイクニュースだった。

たしかに、反原発派の主張にはおかしい部分も少なくなかったのだが、しかしながら原発の安全管理が非常に杜撰に行われており、事故が起こるのは時間の問題だ、という反原発派の主張は結局正しかったのだ。

当時から原発の安全性に関する懸念はさんざん指摘されていたにも関わらず、経産省の官僚は保身と出世に汲々とするだけで、原発の安全性を向上させるという義務を怠ってきた。

福島第一原発が爆発したのは津波によって地下にある冷却用のポンプが水没したからだったが、一説によると、このポンプを安全な場所に移すには数百万程度の費用しか掛からなかったといわれている。

まさかポンプ移設が数百万で済むとは思えないが、もしそれよりも費用が掛かったとしても、せいぜい数億程度の金で済んだであろう。

しかし、その代わりに経産省の官僚がしたことは、電事連を通して民放に年間にして2,000億円もの金をばらまいてフェイクニュースを垂れ流し、原発に関する懸念や不祥事(不祥事というが、端的には違法行為、犯罪である)を握りつぶす事だった。

これはなにも数十年前、数百年前の話ではない。

つい6年前、2011年の3月11日までそうだったのだ。

このような前科のある経産省がフェイクニュースの問題を取り上げて国民に説教するなど、図々しいにも程がある。

僕個人としてはこのレポートは好意的にとらえており、あまり過去のことをあれこれいうのは気が進まない。

僕だってこの先、経産省の官僚の方と話すことがあるかもしれないわけで、あまり原発についてばかり拘る人間と思われるのは本意ではない。

しかし、このフェイクニュースの取り上げ方には経産省の当事者意識のなさが間接的な形で表れていると思う。

経産省の職員なら、フェイクニュースと聞いた時点で、フェイクニュース→安全神話→マスコミ→電事連経産省→爆発、というように連想を巡らせないといけないのだ。

経産省というフェイクニュースの親玉だった組織に在籍しながら、フェイクニュースの脅威について(もちろん経産省がやってきたことは丸ごとスルーして)このようなレポートを書くところを見ると、意識は高くて他人事、という経産省の無責任体質は全く変わっていないのではないか、と疑わざるをえない。

フェイクニュースというのは、裏で汚いカネを受け取りながら(たとえば電事連から年額にして2,000億とか)エスタブリッシュメントに都合のいい話を垂れ流す既存メディアに対抗するための記号にすぎないので、ある意味、内容が真実であるかは問題ではない。

フェイクニュースの存在は既存メディアの腐敗、もっと言えば行政腐敗(原発を爆発させるとか)を含むエスタブリッシュメントの腐敗と表裏一体の関係にあり、フェイクニュースのみを批判するのは許されない。

いや、このレポートは明るい未来像を語るためのもので、経産省の過去の失政について論ずるためのものではない、という人もいるかもしれない。

僕も、これについてはある程度の理解ができる。

しかし、そうであるならばフェイクニュースの話題はスルーするべきだし、もし取り上げるなら過去の原発に関連した経産省発のフェイクニュースについても何らかの形で論じなければならない。

それをしないならば、このレポートは、小泉政権が郵政をスケープゴートにしたように、厚労省スケープゴートにして経産省の失政から国民の目をそらし、自らの延命を図ることを目的としたもの、と疑われても仕方がない。

僕は何も経産省に、国民に対してペコペコしろ、と言っているのではない。

官僚がペコペコしてもいいことは何もない。

しかし、謝罪がない事と反省がない事は全く別の事である。

もちろん、このレポートを作成した若手職員は原発行政に深く関わったわけではないだろう。

それでも、年配の職員と話をする中で「フェイクニュースというけど、安全神話だってフェイクニュースなんだよね」というような話があってよさそうなものだ。

もし経産省の全体として、原発事故がなかった事になっているとしたら恐ろしい。

このレポートは原発を爆発させた経産省によるものである、という事実は、はっきりと認識される必要がある。

原発を爆発させた官僚だって意識高く天下国家を論じていたことを国民は忘れるべきではない。

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経産省の「不安な個人、立ちすくむ国家」という資料を読んだ

経産省の二十代、三十代の職員が日本の将来像を論じたというプレゼン資料が話題になっている。

http://www.meti.go.jp/committee/summary/eic0009/pdf/020_02_00.pdf

日本をダメにした戦犯の一つと広く見なされている経産省からこのようなものが出てくるというのは興味深いことで、ネットでは「また経産省か!困ったものだ」という意見も聞かれるが、しかしその内容はいろいろ考えさせられるものがある。

女性職員が多く関わっているのか、レポートに高学歴女性の問題意識(あるいは利害)がストレートに反映されているのも興味深い。

プレゼン資料もいかにも可愛らしい感じで、良くも悪くも、女性の「活用」が大きな効果を上げた事例であると言えるだろう。

 

それでその内容だが、どうも「大躍進」レベルに評判が悪くなった「構造改革」(経産省もそれなりにこれに関わったはずだ)を反省し、新自由主義の原点に戻って日本を再生しよう、という提言のように思える。

この失われた20年(あるいは30年)の間、日本の政治・行政は新自由主義の強い影響下にあったわけだが、しかしながらその結果というと、プレゼン資料にもあるように、これはいわば旧制度とネオリベの悪いとこ取りとでもいうべきもので、今はごまかせてもそのうちに清算する必要があるのはだれでも分かることだ。

そのような腐敗した制度は解体し、

・これからはセーフティーネットになっていない福祉政策を見直し
・必要最低限のセーフティーネットを徹底的に強化する一方で
・大して効果がないどころか、結果としてありがた迷惑になっているような福祉制度は解体し
・節約できたカネを将来に向けて投資するべき

というのがレポートの主張するところである。

過剰福祉は国民が福祉に完全に依存するようになる一方で、現状をみても分かるように弱者の救済が極めて恣意的に行われるという問題点がある。

これは穴の空いたバケツに水を注ぐようなもので、いくら福祉を拡大しても目的は達成されない。

しかも福祉にカネを取られて、将来に向けた必要な投資ができなくなるから、社会はジリ貧状態になって疲弊するばかりとなる。

国民ができることを国がやってしまうのは非効率で、しかも国民のほうもやることがなくなってしまうので孤立化するから手厚い福祉が国民の幸福に繋がらない。

これらの主張は新自由主義としては典型的なもので、一言で言えば、再配分する小さな政府というのがこのレポートの方向という印象を受ける。

 

このレポートでまず注目されるのは、いま時代は、

保護主義ナショナリズムに代表される封建主義的な社会か
・安心して自由な選択ができるリベラルな社会か

を選ぶ分岐点に差し掛かっている、といったあとで、封建主義的な問題の解決手法が全く無視されていることである。

どうも、封建主義的な社会というのは間違った社会であるとかんがえているようだ。

ところが、資料のはじめのほうに列挙された国民の不安のかなりの部分は、まさに自由主義の帰結として生じたもので、セーフティーネットを整備してどうにかなる、というわけでもない。

立ちすくむ人はセーフティーネットがあっても立ちすくむというか、問題が個人個人の精神的なものなので(精神的にダメージを食らいたくないとか)、セーフティーネットとはあまり関係ない。

少子化問題なんかはその典型で、仮にこのレポートの提言を全部実行したとしても少子化問題が解決しないのは明らかである。

人間というのは昔からそういうもので、要するに、立ちすくむ個人の背中をヤキモキした周りが強引に押しだす、というのが封建社会だった。

それがどんなものであれ、一応それは前進なのだから永遠に立ちすくんでいるよりマシ、自分で自分のことを決められるほど人間は強くない、というのが封建主義的な価値観である。

福祉の制限についても、封建主義的な社会では共同体に著しい負担や危険をもたらす者を排除、抹殺、隔離するための仕組みがある。

ところが、自由主義に基づく社会ではこのような手段を講ずることができない。

結果として生じた負担のかなりの部分を社会に押し付けることになり、負担を恐れる結果として社会がたちすくむことになる。

 

もし社会を

・封建主義的な小さな政府
自由主義的な小さな政府
・封建主義的な大きな政府
自由主義的な大きな政府

の四つに分類するとすれば、このレポートで封建主義的な小さな政府について全く論じられていないのは不自然に感じる。

たとえば少子化についていえば、存在する選択肢は性的分業か少子化かの二つに一つで、これは動かしようがない。

このレポートがいうように、個人個人が(たとえば女性が)自由な選択ができるほど社会は最適化される、という考えは疑わしい。

おそらく、封建主義的な発想なしでは今日の社会が直面する問題を解決することはできない。

なぜそれを言わないのというと、それはもちろん経産省の職員にとって都合が悪いからで、子供一人あたりを支える大人は増加する、というのはそれ自体は重要な指摘であっても、やはりごまかしにすぎない。

ネットで「経産省らしいよね」という冷ややかな声が聞かれるのは故のない事ではない。

 

構造改革」の悲惨な顛末を体験して、国民は新自由主義の気配がするものに強い猜疑心を持つようになっており、経産省もそこらへんはかなり意識している様子が伺える。

たしかに、このレポートにかいてあることはいかにもネオリベ政治家が選挙中にいいそうなことで、実際にどのような形で政策が実行されるかに不安があるのだ。

財務省の職員ではないが、この経産省のリポートを「忖度」して、これは新手の「構造改革」なのではないか?と疑う声があるのは無理もない。

 結局、この路線が成功するかは、エリートにうれしい♡政策をいかに後回しできるかにかかっている。

構造改革」が頓挫したのは、エリートがエゴをむき出しにし、国家のことは御構い無しに火事場泥棒的な利益を得ようとしたからだった。

「二度目の見逃し三振は許されない」と煽るからには、このようなことを繰り返すのはナシにしていただきたいものだし、レポートにこの点からの反省が見あたらないのは気にかかる。

 

とはいえ、それが現実的であるかどうかはともかくとして、僕は今の時代に明るい未来像を提示しようと試みることには非常に大きな意義があると考える。

もちろん、こういうレポートを両手を挙げて称賛するというのは論外であるが、論点を提示するという意味でこのレポートは非常によくできていると思う。

再配分する小さな政府、というのは方向としては(少なくとも一時的には)正しいので、この方向でさらなる議論がなされることを期待する。

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