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グローバル引きこもりブログ

「Common Lispと関数型プログラミングの基礎」というプログラミングの本を書いてます。他に「引きこもりが教える! 自由に生きるための英語学習法」という英語学習の本も書いています。メール acc4297gあっとgmail.com

アパートの建築ラッシュと再配分

ネットで見たんだけど、首都圏でアパートの空室率がものすごい勢いで増加しているらしい。首都圏といってもエリアによって状況は異なるけれども、神奈川の状況は特にすごくて、2015年3月の時点で空室率が30パーセントだったものが2016年3月の時点で36パーセントにまでなっているという。

この空室率の増加は普通ではない。今ざっと紙と鉛筆で計算してみたが、これは神奈川のアパートの部屋数がたった一年で10パーセントくらい増えたことを意味する。首都圏におけるアパートの建築ラッシュがいかに凄まじいものであるかがよく分かる。しかも、先ほど部屋数が10パーセント増えたと言ったけれども、これはあくまで2016年3月での数字なのだ。いま計画・建設中のアパートがある事を考えると、将来この数字がどこまで大きくなるか分からない。

なぜこれほど急激にアパートが増えたのか?どうも相続税法が改正になり、資産を現金で相続するよりは土地とアパートとして相続したほうが有利だと判断する人が増えたのが原因らしい。資産を土地とアパートにすると課税額が大幅に減るらしいのだ。

ここで面白いと思うのは、アパートを建設するという節税行為がそのまま所得の再配分になっている事だ。これだけ空室が増えたら家賃に対する影響は避けられない。人気のあるエリアの物件なら家賃はそれほど変わらないかもしれないが、立地条件が不利な地域の物件の家賃は大幅に下落するだろう。家賃が下落するという事は、資産家から居住者に所得が移転したという事である。もし家賃の月額が2万円さがった場合、資産家から居住者に1月あたり2万円所得が移転しているのだ。

さらにアパートを建てるという事自体も所得の再配分である。これだけのアパートの建築ラッシュとなると、人手は相当足りなくなっているに違いない。スケジュール通りにアパートを建てないといけないのに人手が足りないとなると、出来る事は賃金を引き上げる以外ない。国立競技場の騒動でも分かった事だけれども、最近建築労働者の賃金はかなり上がっている。そしてその上がった分の賃金はもちろん資産家が支払う事になるのだ。つまり、アパートを使った節税スキームの流行によって、資産家から建築労働者へと所得が移転しているということになる。

このようなカネの流れを想像してみると、国家権力が本気で再配分をしようとした場合、これを回避するというのは一般人が考える以上に難しい事がわかる。難しいからアパートの部屋数が1割も増えるという事態になるのだ。どんな税制にもうまい節税スキームはあるだろうが、みんなが同じスキームを使い始めるとスキームが成立するための前提が崩壊してしまうのである。もしアパートを建てるという節税方法が一部の資産家だけによって行われていたらこのスキームは有効であるだろう。しかしみんながこのスキームを使い始めるとなると、家賃の崩壊・建築コストの上昇などの思わぬ帰結が生じるのだ。

多分アパートで節税しようとした人のかなりの部分は骨折り損のくたびれ儲けということになりそうな気がする。空室は増えて家賃が下がる一方、固定資産税などは払わないといけないのだ。僕は不動産業界については詳しくないので、自分が思っている以上に不動産による相続税節税は有効なのかもしれないけど、なんとなく普通に納税をして残ったカネでインデックスファンドでも買っておけば良かったのに、という結果になりそうな気がする。不動産を所有する際に生じる面倒を考えるとなおさらである。