グローバル引きこもり的ブログ

「Common Lispと関数型プログラミングの基礎」というプログラミングの本を書いてます。他に「引きこもりが教える! 自由に生きるための英語学習法」という英語学習の本も書いています。メール → acc4297gアットマークgmail.com

オバマの退任演説を見た

テレビの中継でオバマの退任演説を見た。

なかなかいい話だった。

でも、いい話というのは確かなんだけど、失敗を失敗と認めるわけにはいかない苦しさが出ていたと思う。少し熱気や盛り上がりに欠ける演説だった。それは退任演説ということもあるだろうけれども、やはりオバマのようなスタイルの政治の問題点が明らかになりつつあるからなんだろうな、と思った。

オバマが大統領になった時に多くの人々がアメリカ社会は大きく変化するだろうと思っていた。しかし8年後の今、オバマの政治のためにアメリカ社会が本質的な意味で変化したと考える人はおそらく一人もいないだろう。オバマの政治の方向というのはアメリカ社会を根本から変えるようなものではなかった。だからオバマの政治によってアメリカの社会は全然変わらなかった。

オバマの政治は基本的に、経済的にも社会的にも自由主義的なものだった。その政治の方向は、TTPとTTIPの推進の仕方によく表れている。右翼・左翼に関わらず、これらの自由貿易協定を非常に危険なものとみなす人は多かった。ところがオバマはこれらの自由貿易協定がどのようなものになるのかに全く無関心であるように見えた。

僕はオバマ自由貿易の危険性に関する発言を聞いた事がない。オバマの話から聞こえてくるのは、自由貿易というものは基本的には良いものであるという一般論ばかりだった。要するに、これらの協定の締結を既得権益層に丸投げしたのだ。

オバマがどのような人間であるかを理解するには、オバマが何に関心を持ったのかだけではなく、何に関心を持たなかったのかに注意する必要があるだろう。たとえば遺伝子組み換え食品について、オバマの姿勢は基本的にはこれらのビジネスをする大企業の方針を追認するようなものだったはずだ。オバマが無関心の中で追認した大企業の危険そうなビジネスは少なくない。

そしてもちろん、オバマは社会的にも自由主義的な政治家だった。自由貿易の危険に関しては無関心である一方、オバマは人種問題や宗教の自由などについて積極的に発言した。政治的な関心の持ち方において、オバマの関心は裕福なリベラル派のものと全く変わらなかった。それは本質的に、裕福なリベラル派の利害と衝突するものではなかったのである。オバマが経済的自由主義の問題点に強い関心を持っていたのは確かである。しかし、もし社会的自由主義に基づく社会の帰結が経済的自由主義に基づく社会である場合、オバマが行ったような政治は問題を解決できない。

最後の演説になってもいつものように、アメリカの例外主義を何の抵抗もなく(もっと言えば何の反省もなく)打ち出しているのも興味深い。何々がアメリカを世界で最も素晴らしい国にしているのです、というアレである。この何々にはフリーマーケットとか移民とか多様性とか男女同権とかその時々で様々なタームが入るが、ポリティカル・コレクトネスの嵐が吹き荒れる中でこのアメリカの例外主義だけは何の問題もなく公言できるというのは考えてみたら不思議である。

このアメリカの例外主義が海外での軍事介入につながるのはオバマ政権でも変わりがなかった。大きなヘマをするなら何もしないほうがマシ、という教訓はオバマ政権になっても学ばれる事はなかった。演説の中で、アメリカの価値観を守るには世界をアメリカみたいにすればいい、みたいな発言があった時は驚いた。中東がこういう悲惨な状態になった後でこういう発言がある所にリベラルの介入主義のしぶとさを感じた。

オバマは変化の重要性を強調したけれども、基本的には現状を肯定する政治家だった思う。現状肯定だから自由主義と介入主義になるのである。オバマがいう変化というのはアメリカを「理念」を実現させるような変化で、裕福なリベラル派が口にするような理念そのものに問題があるとは考えていないのだ。

オバマの政治でアメリカが変わらなかったのは、オバマが信じる理想がこれまでのものと同じだったからである。もし価値観が以前と変わらないならば社会が変わらないのは当然の事と言える。

新しい社会には新しい価値観が必要なのだ。

結局オバマの政治はヒラリーの敗北という形で否定された。オバマ政権の8年というのは理想主義の限界が明らかになった8年だと思う。結局、リベラル派の理念は裕福なリベラル派が一番トクをする理念であり、ここ2,30年ほどの流行りものに過ぎない。もしオバマの理念が普遍的なものならば、それはもっとうまく行くはずなのだ。所詮は流行りものだからうまく行かないのである。

これからのアメリカ政治は理想主義的(idealistic)なものから現実主義的(pragmatic)なものへと変わっていくだろう。

オバマが退任演説を民主党支持者の集会で行った事には賛否両論あるが、僕としてはこの選択を肯定的にとらえたい。演説の中でオバマは今後も一市民として理想を実現するために活動すると明言した。そういう意味で、今回の退任演説は終わりであると同時に始まりでもあるのであり、この始まりを大統領としてではなく一人の政治活動家として宣言するというのは正しい判断だと僕は考える。

一人の英語学習者としては、もうオバマの話をテレビで聴けないのかと思うと少し残念に感じる。その主張に賛成するかはともかくとして、オバマの話というのは面白いのだ。その話芸は天才的で、政治家というのはこう話すべきだという見本である。今回の演説でも、最後にyes, we canという所はうまいなあ、と思った。

オバマの政治活動は今後も続いていくので、その動向は時折チェックしていきたい。

電子出版した本

Common Lispと関数型プログラミングの基礎

Common Lispと関数型プログラミングの基礎

 

多分、世界で一番簡単なプログラミングの入門書です。プログラミングの入門書というのは文法が分かるだけで、プログラムをするというのはどういう事なのかさっぱりわからないものがほとんどですが、この本はHTMLファイルの生成、3Dアニメーション、楕円軌道の計算、 LISPコンパイラ(というよりLISPプログラムをPostScriptに変換するトランスレーター)、LZハフマン圧縮までやります。これを読めばゼロから初めて、実際に意味のあるプログラムをどうやって作っていけばいいかまで分かると思います。外部ライブラリーは使っていません。

世間は英語英語と煽りまくりですけれども、じゃあ具体的に英語をどうするのか?というと情報がぜんぜんないんですよね。なんだかやたら非効率だったり、全然意味のない精神論が多いです。この本には僕が英語を勉強した時の方法が全部書いてあります。この本の情報だけで、読む・書く・聞く・話すは一通り出来るようになると思います。