グローバル引きこもり的ブログ

「Common Lispと関数型プログラミングの基礎」というプログラミングの本を書いてます。他に「引きこもりが教える! 自由に生きるための英語学習法」という英語学習の本も書いています。メール → acc4297gアットマークgmail.com

夕張の財政破綻とベーシックインカム

夕張というと、昔はメロン、今は財政破綻で有名だが(今でも、メロンはそれなりに有名なのだろうが)、この夕張の財政破綻を取り上げた興味深い記事を見た。

news.yahoo.co.jp

考えてみたら、夕張というのはもうあえて行こうとする人がいないような所になっているわけで、そういう中で夕張に行って実情をレポートするというのは非常に価値のある事である。

 

この記事では、夕張が破綻をした理由として、炭鉱に代わる、しかも石炭産業と同じくらいの豊かさを約束するような産業が採算がとれるはずもないテーマパークなどの建設くらいしかなかったから、と分析している。

僕は今まで夕張がもともとは炭鉱で栄えた町である事を知らなかったが、たしかにこの事実を認識していないと、どうして夕張がこうなったのかわからない。

たしかに、なまじっか石炭の採掘から来る富(と、それに関連する山師的なメンタリティー)があったので、夕張が杜撰な公共事業に邁進した、というのはリアリティーがある。

この記事も指摘しているように、一度豊かな生活に慣れてしまうと貧しい生活に戻るのは難しい。

カネがかからなくてもそれなりに満足する生活を送るには知恵が必要で、豊かな生活を送っているとその知恵が失われてしまうのだ。

リスクを取れば大金を手にできた夕張では、堅実に生計を立てるという習慣があまり根付いていなかったのだろう。

 

しかし、僕はそれに関連する話として次のような下りが気になった。

国や道は1990年代から夕張の破綻を予期しながら、無許可起債に手を貸してきた。傷を広げたリゾート開発の絵を描いたのは東京のコンサル会社だし、頼る親戚なり労働市場で売りになるスキルを持った人は夕張を逃げ出してしまっている。市役所職員の待遇は全国最低水準だが、現在の職員の約6割は財政破綻時は無役の係員で、破綻後に入庁した職員がすでに約3割を占めているという。そもそも夕張市の債務は誰が積み上げて、本来であれば誰が返済すべき債務なのだろうか。

夕張の借金が何百億あるのか知らないが、この何百億は一体どこにいったのか。

もちろん、この何百億のいくらかは夕張市民の生活を回すために使われたのは間違いない。

しかし、公共事業の常として、こういう何百億からはものすごい中抜きが行われる。

そして、その中抜きを行っているのは「東京のコンサル会社」だったり、「労働市場で売りになるスキルを持った人」だったりする。

こういう人達は夕張で儲けるだけ儲け、その結果生じるコストに対して一切コストを負わない。

コストを負うのは、受動的にこのスキームに加担をした、夕張から動けない夕張市民である(まあ、ある程度は国民負担になりそうだが)。

 

左翼はよく、税金がムダに浪費された、というが、この言い方は非常によくない。

これでは使われたカネがなくなるように聞こえてしまう。

しかし、カネというものはなくならない。

「消費された税金」は、だれかが持っている。

具体的には、だれかの(あるいは、どこかの)銀行口座に移動しているのである。

夕張の場合、もし借金の何百億が全額夕張市民の手に渡ったというならまだよい。

しかし、夕張市民が負うのは、抜かれた分を含む数百億なのだ。

これは2段階のババ抜きである。

まずババを引くのは夕張市民で、それから夕張市民の間でもババを引く人と引かない人が決まってくる。

そして、日本ではこの手のババ抜きをして大金を儲けるスキームがものすごい発達しているのだ。

 

ベーシックインカムの利点の一つに、この手の中抜きがない事がある。

公共事業というのは、その事業がどれくらい有益であるか、ということ以前に、雇用を確保するという目的がある。

雇用を確保する必要などない、夕張の市民だってそこを立ち去る権利がある、と新自由主義者は主張するだろうが(そして、この議論はそれなりに正当なものだが)、しかし現実問題としてはなかなかうまくいかない。

たとえば、経済合理性だけを考えれば、北海道というものは北海道だけでは成り立たない。

北海道というのは、本土のカネがなければ成り立たないのだ。

しかし、北海道が経済的に成り立たないからといって、北海道をロシアや中国に売り飛ばすわけにはいかない。

それと同様、夕張のような田舎というのも、やはり日本には必要である。

ところが、それでは住民の雇用をどうするか、ということになると、現状では(直接的か間接的か、という違いはあっても)先ほどいったようなババ抜きをするしかなない。

こういうババ抜きのスキームを組む連中がどういう連中なのか、薄々は気づいていても、である(まあ、業者のほうはクライアントの要求するものを出しているだけ、というのもあるが)。

 

世間では無条件で、働く事は良い事だ、と決まっている。

しかし、労働を通じたリソースの分配には必ず中抜きが伴う。

そして、近年の日本の低迷は、この中抜きのからくる非効率性が大きな原因になっている。

ところが世間では、この中抜きに従事している人も「真面目に働く社会人」として評価される。

忘れてはならない。

夕張の中抜きスキームで大金を儲けた連中も、「一生懸命働いた」のだ。

これからの社会には、絶対にベーシックインカム的な手法が必要である。

ベーシックインカムによって生じる問題はあるだろうが、少なくともババ抜きを続けて夕張状態になるよりはマシだろう。

電子出版した本

Common Lispと関数型プログラミングの基礎

Common Lispと関数型プログラミングの基礎

 

多分、世界で一番簡単なプログラミングの入門書です。プログラミングの入門書というのは文法が分かるだけで、プログラムをするというのはどういう事なのかさっぱりわからないものがほとんどですが、この本はHTMLファイルの生成、3Dアニメーション、楕円軌道の計算、 LISPコンパイラ(というよりLISPプログラムをPostScriptに変換するトランスレーター)、LZハフマン圧縮までやります。これを読めばゼロから初めて、実際に意味のあるプログラムをどうやって作っていけばいいかまで分かると思います。外部ライブラリーは使っていません。 

世間は英語英語と煽りまくりですけれども、じゃあ具体的に英語をどうするのか?というと情報がぜんぜんないんですよね。なんだかやたら非効率だったり、全然意味のない精神論が多いです。この本には僕が英語を勉強した時の方法が全部書いてあります。この本の情報だけで、読む・書く・聞く・話すは一通り出来るようになると思います。