グローバル引きこもり的ブログ

「Common Lispと関数型プログラミングの基礎」というプログラミングの本を書いてます。他に「引きこもりが教える! 自由に生きるための英語学習法」という英語学習の本も書いています。メール → acc4297gアットマークgmail.com

[翻訳] アメリカに警告する:トランプを無かった事にできるとは考えない方がいい

Note to America: Don’t Be So Sure You’ve Put Trump Behind You | The Nation

イギリス人なのだが聞いてほしい、真に問題に取り組まない限り右翼的なポピュリズムは繁栄する

Gary Younge

私は一年を英国で過ごした後、インディアナにある小さな街で大統領選を取材するためにアメリカに戻ってきた。英国のEU離脱が心の中にあった。

6月の24日、目が覚めたら違う国にいるように多くの人々は感じていた。英国は僅差で、EUを離脱する事になったのである。私は恐怖・孤独・外国人嫌いの政治が破壊的で持続的なダメージを国家に与えたのだと感じた。この晩の経験から学ぶべき事は多く、実際私たちはようやくそれらを学び始めた所である。学び始めた所ではあるが、ここでアメリカでの選挙に関連して次の3点を指摘したい。

まず、世論調査を見て投票行動を変えてはならない。もしヒラリー・クリントンに勝ってほしいなら、彼女に投票しなければならない。もしジル・スタインを支持するなら、彼女に投票しなければならない。投票結果を予測して、その予想が気に食わない時にだけ投票するというような事はするべきでない。何が起きているかは誰もわからないのだ。

英国のEU離脱は油断していた通貨トレーダー、世論調査専門家、ブックメーカー、コメンテーターの上に襲いかかった。離脱キャンペーンの主要人物であるUKIPのナイジェル・ファラージが敗北を表明したのは選挙日の夜10時の事だった。6時間後、彼は勝利を宣言していた。

いま、世論調査クリントンの圧勝を予測している。もしかして正しいのかもしれない。しかし、情勢は非常に不安定である。もしかして、予想は間違いであるかもしれない。そして、結果が出た後では、私たちは何もする事ができないのである。

2番目に指摘したいのは、何かを話している人間が狂人だからといって、その内容に何一つ重要なものがない、と考えるのは間違いだという事である。国民投票の前、リベラル派は離脱の支持者を無知な、現状に不満を持っている、偏狭な人間だと見下していた。EU離脱という結果によって始めて、社会は新自由主義的なグローバル化によって打撃をうけたコミュニティーに注意を向ける事になったのである。もし結果がEU残留だったならば、それらの忘れられたコミュニティーは忘れられたままだったに違いない。

政治家が見当違いな結論を導き出すのは確かである。例えば、資本の移動の自由を問題視する代わりに、人の移動の自由を非難するというような事である。それにも関わらず、長年無視されてきた地域の問題は英国政治の中心に浮かび上がってきたのだ。

もしヒラリー・クリントンが勝ったとしても、我々はトランプの大統領候補指名を可能にした社会問題を無視するべきではない。私が選挙戦の間に滞在したインディアナ州のマンシーという町では、NAFTAのせいで大工場が閉鎖され、三分の一の人口が貧困状態に陥った。トランプ支持者は特に貧困層というわけではないのだが、それでも無視できない数の人がギリギリの状態にある。理由は簡単である。ここ40年の間に、賃金の他はあらゆるものの価格が高騰している。不平等は拡大し、社会流動性は停滞している。ブレグジット運動のように、ペンシルバニア、ミシガン、ウィスコンシン州の工業地帯をターゲットにするというトランプの戦略は選挙運動としては有効ではないかもしれないが、トランプが特定した社会問題ははっきりと見える社会的な震源地なのであり、ヒラリーが当選したからといって消えて無くなるわけではないのだ。もしこれらの問題に手当てがされなければ、トランプよりも洗練された右翼ポピュリストはこれらの問題に簡単に付け込む事ができるだろう。

この事から、次の3つ目の教訓が理解される。トランプは多くの間違った事を信じ込んでいるのであるが、メディアと政治家は国民から完全にかい離している、というトランプの主張は正しい。メディア関係者と政治家は悪臭を放つイデオロギーに安住し、急激な変化を冒涜的行為とみなす。急激な変化が社会に必要とされている上に、人気があるにも関わらずである。

EU離脱の選挙が近づく中で、残留派は離脱派の立場を理解しようとする代わりに笑いものにする事を好んだ。彼らは離脱派の主導者をバカにするだけでなく、離脱を支持する国民までをもバカにしたのである。苦境に立たされている人に、「いや、実はあなたの生活は素晴らしいものなのです」と言った所で、納得する人は誰もいない。しかし残留派は選挙期間を通して、EUによってもたらされる利益と、離脱に伴って生じるであろう不利益について国民に説教をするばかりだった。トニー・ブレアからデヴィッド・キャメロンに至るまで、政治家は国民をこのような社会に押し込めてきた挙句に、「自助努力のみがあなた方を救うのだ」などと言い始めている。国民はもはや、政治家など相手にしていない。

マンシーの住人を始めとする国民は、NAFTA、金融規制の撤廃、イラク戦争などのワシントン発の災難はすべて、主要政党がグルになった結果であると気づいている。そしてメディアはこれらの企てのチアリーダーだったのだ。だからデラウェア州では、予備選でトランプとバーニー・サンダースが勝ったのだ。トランプを見捨てた共和党員を持ち出してトランプを批判する民主党員は、自分のしている事が次のようなトランプの主張の宣伝になっている事が分かっていない。「あなたのためには何一つしてくれないエスタブリッシュメントに限って私を嫌っているのである。私はあなたのために正しい事をするつもりだ」

英国のEU離脱とアメリカの選挙は同じものではない。しかし、国家主義的な郷愁、外国人嫌い、政情不安、階級問題の点から見ると、両者には多くの共通点がある。

マンシーで私は、トランプの支持者(何人かは前回オバマに投票した有権者)が何度も、私はただ「物事をひっくり返したい(shake things up)」のだ、と言うのを聞いた。「民主党の主流派は、ゆっくりした変化を非常に、非常に好むのです」と、バーニー・サンダースを支持し、マンシーで有機農園とダウンタウン・ファーム・スタンドという売店、オーガニック・レストランを経営するデイヴ・リングは言う。「そして国民は、そんな時間はない、もうそんな余裕などない。これ以上待たないといけないの?と言っているのです」

ヒラリーが勝ったとしても、このような切迫感が消えて無くなる事はないだろう。もし国民投票の結果がEU残留だったとしても、英国社会のすべてが順調であるという事にはならないのと同じである。6月24日になったからといって、私たちは別の国で目覚めたわけではなかった。私たちが持っていた英国のイメージの方が間違っていたのである。トランプの敗北は現状に対する支持とみなすべきではない。まだ谷底に転落していないからといって(英国は転落したわけだが)、崖までにはまだ距離があるという事にはならないのである。

感想

やっぱり、投票で思い知らせないとだめだね。

それにしても、英国人が書いているだけあってなかなか激烈ですなあ。まあ、左翼の論調も変わってくるんだろうね。見当違いの事を書いてたらだんだん売れなくなってくるだろうからね。