グローバル引きこもり的ブログ

「Common Lispと関数型プログラミングの基礎」というプログラミングの本を書いてます。他に「引きこもりが教える! 自由に生きるための英語学習法」という英語学習の本も書いています。メール → acc4297gアットマークgmail.com

中高生の読解力テストは間違うのが当然だ

一部では非常に大きな反響があった中高生の読解力についての報道だが、どうも問題のほうにも問題があるようだ。

www.tokyo-np.co.jp

僕もこの報道についてエントリーを書いたけれども、その時に前提としていたのはこのテストの問題が子供の国語力を見るために適当なものであるという事だった。

以前、テレビで新井氏らのグループが子供の国語力につて調べているという話を見た事があって、その時に紹介された問題はなかなかいい問題だと思ったので、そのような認識をもってエントリーを書いた。

しかし最近、この国語のテストの結果というのは本当に子供の国語力を反映しているものなのか少し不安に思うような報道を見たので、それについても思うところを書こうと思う。

 

読売新聞によると、今回の国語力のテストには次の二つの文章の「意味」が同じかどうか、という問題があったのだという。

輸出が伸び悩む中でも、和牛が人気の牛肉や、和食ブームを反映した緑茶や日本酒などは好調だ。
輸出が伸び悩む中でも、和食ブームを反映した日本酒や緑茶、和牛が人気の牛肉などは好調だ。

まず「和牛が人気の牛肉」というような日本語は個人的にはとても耐えられないし、「和食ブームを反映した緑茶や日本酒」という部分は日本語として間違っているが、それはともかくこの問題は少し問題があると思う。

というのは、上の二つの文章を読んで同じ意味だと思った生徒が意味が同じである、と回答したとは限らないからだ。

僕が思うに、上の問題を読んだ中高生のかなりの部分は二つの文章が同じ意味であるということが分かったと思う。

それではどうして中高生で二つの文章の意味が違う、という回答をした生徒が相当いるのかというと、多分生徒の中にこの問題がひっかけかなんかじゃないか、と思った生徒がいたからだと思う。

 

上の二つの文章はどう見ても全く同じ事を言っているように見えるし、実際に同じ事を言っている。

しかし人間というのは簡単な問題を出されるとかえって不安になる事がある。

一見簡単に見えるけれども、こんな一見簡単に見える問題が出題されるのには何か理由があるのではないか、簡単に見えるのは自分に何か見落としがあるためなのではないか、という不安が生じるのである。

一般的になにかの存在を示すよりもなにかが存在しない事(この場合は意味の違い)を示す方が難しいのだからなおさらである。

なので、意味が同じと思っても回答を逆にした生徒は少なからずいると思う。

 

「意味」が同じかどうか答えよ、という表現も、よくよく考えてみると問題がないとは言えない。

たとえば次の二つの文章があった場合、これらの意味は同じであろうか。

私はあなたが好きです。

私はあなたが嫌いではない。

 「好き」の反対は「嫌い」であり、「嫌い」の反対は「好き」だとすれば論理的に二つの意味は同じであるが、この二つの文章を同じ意味とする人はまずいないだろう。

なぜなら、この二つの文章はそれぞれ全く違う印象を与えるからだ。

好き・嫌いの他に無関心という状態があるからこれは当然の事であるが、しかし意味が同じという事が何を意味するのかは往々にして不明確である。

上の問題では出題者が、好き・嫌いという二つの状態を想定しているか、好き・嫌い・無関心(あるいは分からない)など二つ以上の状態を想定しているかで正解は異なる。

 

もちろん、先ほどの国語の問題で出題された文章は好き・嫌いの例と違い、論理的には完全に同じである。

しかし、論理的に同じでも文章のニュアンスが違う場合、その意味は絶対的に同じとしてよいのだろうか?

たとえば1番目の文章は和牛が先にきて、2番目の文章は緑茶や日本酒が先にきているのでニュアンスが違うと感じる生徒もいるかもしれないし、他の理由で二つの文章に違いを感じる人もいるだろう。

そして論理的には同じだと分かっていても、印象が違うという事で二つの文章が違う意味を持つ、とした生徒もいるに違いない。

 

結局、僕は先ほどの問題を正答できるかは国語力というよりはテスト慣れしているかどうかで決まると思う。

小さい頃からいい学校に進学するのが当たり前、みたいな感じで育っている人は、意味が同じか答えよ、と言われたら回答者が何を要求しているのか明確にわかるから、余計な事を考えずに正解できる。

しかしすべての生徒がテスト慣れしているわけではない。

テスト慣れしていない生徒は、どうしても何かワナがあるんじゃないか、とかなんか感じが違う、とか余計な事を考えてしまって正解できないかもしれない。

出題者の意図がすべての生徒に伝わっているとは限らないのだ。

 

僕は今回の読解力テストが全部問題があるものだとは思わない。

全体を見ると、テストの正答率は子供の読解力をそれなりに反映しているのだろう。

この問題を正答した生徒は読解力が高く、不正解だった生徒には読解力に弱い部分があるというのも事実だと思う。

しかし、もしこの問題の正答率だけをもってして子供の読解力に問題がある、とするならば、それは少し乱暴な議論である。

このテストを行ったグループは間違った回答をした生徒に対して聞き取りをしたのだろうか?

聞き取りをすれば「同じ意味だと思ったけど引っ掛けだと思った」とか「違う感じがしたから意味が違うのかと思った」というような答えが少なからずあると思う。

おそらく「次の4組の文章のうちで意味が異なるものはどれか」とした場合、正答率は大きく異なるのではないか。

こういう調査というのは表面的には科学的に見えても実際には科学とは程遠いケースが少なくない。

たとえ調査結果がセンセーショナルなものだったとしても慎重に内容を見ていく事が必要だろう。

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Common Lispと関数型プログラミングの基礎

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多分、世界で一番簡単なプログラミングの入門書です。プログラミングの入門書というのは文法が分かるだけで、プログラムをするというのはどういう事なのかさっぱりわからないものがほとんどですが、この本はHTMLファイルの生成、3Dアニメーション、楕円軌道の計算、 LISPコンパイラ(というよりLISPプログラムをPostScriptに変換するトランスレーター)、LZハフマン圧縮までやります。これを読めばゼロから初めて、実際に意味のあるプログラムをどうやって作っていけばいいかまで分かると思います。外部ライブラリーは使っていません。 

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