グローバル引きこもり的ブログ

「Common Lispと関数型プログラミングの基礎」というプログラミングの本を書いてます。他に「引きこもりが教える! 自由に生きるための英語学習法」という英語学習の本も書いています。メール → acc4297gアットマークgmail.com

ロシアの「愚行」とイメージ戦略

ここ数日、The Atranticのロシア関係の記事を読んでいるが、読んでいるうちになんとなくこれまでずっと不思議で仕方がなかった疑問に心から納得できる答えを見つけることができたように思う。

その疑問とは他でもない、なんでロシアは何の利益にもならないような愚行を繰り返すのか、ということだ。

たとえば、今これを書いている時点でピョンチャンで冬季オリンピックが開催されるまであと2カ月もないが、4年前の冬季オリンピックはロシアのソチで開催されていた。

このソチのオリンピックは、世界でもっとも恐ろしいエリアの一つである北コーカサスに隣接する地域であるにも関わらず、テロが一つも起きなかったと言う時点で大成功と言えなくもない(まあ、これは混迷する中東情勢のためにイスラム過激派が大勢シリアなどに出払っていた、という事情もあるのだが。ソチを安全にするために、ロシア政府がイスラム過激派が中東に移動するのを支援していた、という噂もある)。

しかし、国際社会におけるロシアのイメージを改善するという意味では、ソチオリンピックは失敗以外の何物でもない。

ソチオリンピックの4年前に行われたバンクーバーオリンピックでのロシア選手団の成績はロシア国民の期待を大幅に裏切るものだった。

ソチではこのような成績は許されない、ということで、ロシアではソチオリンピックに向けて、トレーニング施設や海外からの教育者の招致などに大々的な投資が行われた。

そしてロシアはソチオリンピックで33枚のメダルを獲得し、メダル獲得数で一位となった(金メダル13枚、銀メダル11枚、銅メダル9枚)。

しかしながら、メダル獲得数一位という結果は組織的なドーピングによって獲得されたもので、これまでに11枚のメダルが剥奪されている。

もちろん、11枚のメダルが剥奪されてもまだ22枚のメダルがあるから(これらのメダルが本物であるということを絶対的に保証することはできないが)、ソチオリンピックでのロシアの成績は失敗とはいえない。

金メダルの数についていえば、ロシアのメダルが剥奪された後でもノルウェー11枚、カナダ10枚に続いてロシアとアメリカがそれぞれ9枚となっているので、最も金メダルを獲得したノルウェーとそれほどの違いはない。

しかしながら、自国でオリンピックを開催しながら組織的にドーピングをするというのは深刻な犯罪行為である。これを受けてIOCは、ロシアの選手をロシア選手団としてピョンチャンオリンピックに参加することを禁止する、と決定した。

ロシアの選手は単に「ロシア出身の選手」として、ロシアの代表としてではなく、あくまで個人としてピョンチャンオリンピックに参加することになるのである。

だから、もしロシアが金メダルを獲得してもロシア国歌は流れず、ロシアの国旗も上がらない。その代わりにオリンピックのテーマソングとオリンピックの旗が使用されるのだ。

ロシアとしては、勝っても負けても屈辱的なことだろう。

いわゆる西側諸国で暮らしている人間としては、いったいロシアは何がしたいのか?と言いたくなる。

普通の国では、ドーピングに手を染める選手や指導者は国の評判に泥を塗る国賊なのであり、国はこれらの反国家的犯罪が絶対に起こらないように監視をする立場にある。ところがロシアでは逆に、国自体が積極的にドーピングを行っているのだ。

普通の国は、オリンピックがカネになる、という理由は別にして、国際社会における国の評判をよくするためにオリンピックに参加している。国際社会の評判という観点からすると、ロシアがやっていることは全く愚かに見える。

しかし、もしこのような「愚行」がまさにロシアのイメージ戦略の一環であるとしたらどうだろうか?

The Atranticのロシア関連の記事を読んでいて印象に残った部分がある。それはあるロシア政府に近い人物が語ったことなのだが、どうせロシアは結局は嫌われるのだから、せめて怖れられるほうがいい、というのだ。

ソチオリンピックにおける組織的なドーピングが明らかになった後、ロシアでは何人かの関係者が不審な状況下で亡くなった。もちろん、本当に何があったのかを正確に知ることは外部の人間には不可能なことだが、口封じのために消されたのだろうと広く信じられている。

要するに、ロシアでは権力に深入りすると普通に人が死ぬのである。

ロシア人は、国家の存続のためには個人を挽き潰してもなんとも思わない。メダルを剥奪されてオリンピックから永久追放された選手も全てをかけてスポーツに打ち込んできたのに、国策としてドーピングをした結果、スポーツ選手としての人生は全く台無しになってしまった。

もし仮にドーピングが発覚しなかったとすれば(そのような可能性があるとはロシア人も信じていなかったと思うが)、ロシアはメダルの獲得数でロシアの偉大さを示すことができる。

しかし、もしドーピングが発覚したとしても、全世界にロシアは恐ろしい国であるという強い印象を与えることができる。

むしろ、このような印象を世界に与えるために、バレることを前提としてドーピングを行ったと考える方が自然だろう。

このように考えると、ロシアがソチオリンピックで大々的にドーピングしたのは愚行であるどころか、極めて合理的な選択である。

しかも、これまでドーピングが発覚した競技は、クロスカントリースキーボブスレー、スケルトン、スピードスケート、バイアスロンなど、正直いって一般人にとってはどうでもいい競技ばかりなのである。

フィギュアスケートなどの華やかな競技では華麗なパフォーマンスで(もっとも、ロシアはフィギュアスケートでもドーピングをした疑いがあるのだが)世界を魅了する。

その一方、ドーピングにまつわる恐ろしい話で世界に強いメッセージを送る。

なかなかよくできたイメージ戦略ではないだろうか。

ロシアによるドーピングは、これまで不正によって実績を水増しするために行われるものだと理解されてきた。

しかし、ロシアによるドーピングの本当の目的は、海外のエージェントとその潜在的な協力者に、ロシアは怖ろしい国であり、ロシアの内政に干渉したり、海外のエージェントに協力することは怖ろしいことであるというメッセージを伝えることにあるとおもう。

ピョンチャンでロシアがドーピングを行うのか、そしてドーピングするならばどの程度の規模で行うのかは興味深いテーマだが、ドーピングをはじめとするロシアの「愚行」は、このようにロシアの安全保障の観点からも理解される必要があるのではないだろうか。

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Common Lispと関数型プログラミングの基礎

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