グローバル引きこもり的ブログ

「Common Lispと関数型プログラミングの基礎」というプログラミングの本を書いてます。他に「引きこもりが教える! 自由に生きるための英語学習法」という英語学習の本も書いています。メール → acc4297gアットマークgmail.com

トヨタの借金は社員一人当たり8500万円

「国民1人当たり830万円詐欺」には気をつけよう - シェイブテイル日記という興味深いエントリーを読んだ。トヨタというのは関連企業がたくさんあって一体どこからどこまでがトヨタなのかよく分からないのだが、確かにトヨタを一つの国家だとするとそのGDP(そんなものがあるとすればだが)はそこらの弱小国とは比べものにならないほどに大きいだろう。

大企業と国家というのはいろいろと似ている点があり、大企業を国家として考えたり、あるいは国家を企業として考えるといろいろ面白いのだが、先ほどのエントリーではトヨタと日本を財政の面から比較している。

まとめると

  • マスコミから国民の一人当たりの借金が830万円になったという大本営発表があった(本当はこれは国が国民にしている借金なのであるが)
  • トヨタの年間売上は28兆円で従業員は35万人、負債は29兆円なのでトヨタ社員一人当たりの借金は8500万円にもなる(しかし負債よりも資産が多く実質無借金)
  • トヨタの社長が将来の従業員にツケを残さないよう、社員の給料から10%を天引きすべきだと言い始めたら頭がおかしくなったと思うだろう
  • 日本の財政はトヨタの財政と同じで実質無借金
  • 財政破綻を言うわりに公務員の人件費を増額したり、新聞の軽減税率を求めるというのは、財務省もマスコミも財政破綻論など信じていないのだろう
  • 「国民一人当たり830万円詐欺」には騙されないようにしよう

という感じだろうか。

僕も「国民1人当たり830万円」の借金は、トヨタ従業員一人当たり8500万円の借金のように本質的に返す必要がないものだと考えている(正確には8286万ですが、たしかに8500万のほうがピンとくるからここでも8500万とします)

トヨタの借金29兆円というのはトヨタの売り上げの一年分で、一見返済は非常に困難なように見えるのに誰もこの一人当たり8500万円の借金を問題にしない。トヨタがこの29兆円の借金を返す必要はないからだ。

もう少し正確にいうと、トヨタはこの29兆円の借金を減らす必要がないのである。減らすどころか、トヨタの借金は年々増え続ける一方であるだろう。増え続けたからこそ社員一人当たりの借金が8500万円になるまで借金が積みあがったのであり、この一人当たりの借金は今でも毎日のように増え続けているはずだ。

なぜ、トヨタはここまで借金を積み上げたのか?それは借金をしたほうが競争に有利だからである。借金をしないと競争に負けてしまうのだ。トヨタほどの強大な企業でも、借金をしないと競争に勝てないのである。

国家の借金というのもこれと同じで、借金をしないと国家間の競争に負けてしまう。だから「日本国民一人当たりの借金」が830万円あるのは不思議でもなんでもない。

アメリカ政府の債務などは日本とは比べものにならないくらい莫大だが、だれもアメリカが破産するなんて信じていない。トヨタが持つ富が借金をはるかに上回っているのと同様、アメリカ国家全体に存在する富はアメリカ政府の債務をはるかに上回っているからだ。

そして今のアメリカの繁栄はアメリカ政府の莫大な借金なしには考えられない。トヨタもアメリカも、借金をしてそれ以上の富を作り出すという意味ではやっている事は同じである。資本主義とはそういうもので、資本主義の世界では借金をすることは避けては通れない。

国家の債務が少なければ少ないほど優良国家という議論には全く根拠がない。社員一人当たりの借金が8500万のトヨタが優良企業であるように、政府債務が大きい国家も優良国家でありうる。それはアメリカがそうだし、日本もまあ、世界的にみたら優良国家の部類であるだろう。

トヨタやアメリカが借金で破産するわけでもないように、日本が破産するとはとても思えない。日本が破産するなら、ドイツを始めとしてヨーロッパ諸国は全部破産であるだろう。僕は財政破綻論を信じる人がどうしてこんなに多いのか、本当に全く理解できない。そして日本の短期的、あるいは中・長期的な業績が消費税を10パーセントにすれば良くなるとも思わない。トヨタで緊縮財政を実施して従業員の賃金を10パーセントカットする事がトヨタの競争力を向上させるとはとても思えないようにである。