ロッキード事件のテレビ番組を見た
ブログに書くにはちょっと遅いけど、NHKで「NHKスペシャル 未解決事件」という番組があって、これの最後の回を見たというかテレビをつけたらたまたまやっていた。ロッキード事件については名前しか知らなかったので大変勉強になった。最初から見れてよかった。
どうも番組によると、ロッキード事件というのは基本的に、対潜水艦哨戒機のP3Cを日本に売り込むためにロッキードが裏人脈を使って日本国に工作をした、という事件らしい。
当時ソ連の原子力潜水艦が世界のあちらこちらに出没するのが問題になっていて、そのために専用の飛行機で対抗する必要があったらしいんだけど、ロッキードはなんとしても自社のP3Cを日本に売り込みたかったので犯罪的な方法を使って日本に工作をした。当時日本では国産の哨戒機を開発する計画が進んでいて、当時経営が傾いていたロッキードはなんとしてもこの計画を潰してP3Cを売り込みたかったんだって。
面白いと思ったのは、ロッキードがP3Cを日本に売り込んだ方法はたしかに犯罪的だったけど、日本がP3Cを導入する事自体は国益に反するというわけではなかった、という事。
というのは、西側世界を一つの経済ブロックとして見た場合、同じような飛行機を作るのは無駄といえば無駄なんだよね。しかも日本は武器を輸出できないので、日本で哨戒機を作っても日本でしか使えない。数が出ないので、国産にするとP3Cを導入するのと比べてコストが倍くらいかかると試算されており、大蔵省でもP3Cを輸入すべきか、それとも自国で生産するべきかで意見が分かれているという状況だったという。
飛行機というのは沢山つくるほど一台あたりのコストはさがるからね。アメリカと日本で共通の飛行機を使った方がいいよね。それで、日本はコストを節約できた分をなにか得意な分野に回す。そうしたほうが日本とアメリカを合わせて考えた場合の戦力が増す。
しかも、当時は日米で貿易摩擦があったわけだから、この点でもアメリカから哨戒機を輸入したほうが政治的なバランスが取れる。だいたい冷戦やっているときに、ロッキードが経営難というのは良くない。
P3Cは開発されて50年たった今でも普通に使われている。やっぱり非常によくできた飛行機なんだろう。だから、P3Cを導入する事自体に問題はなかった。今でも自衛隊は日常的にP3Cを使っているわけだからね。
まあ、そういうわけでロッキード事件に関わった人間はあんまり罪悪感はなかったんじゃないかな。P3Cを導入するのは国益のためなんだから、少しくらい悪いことをしても問題ないと思ってたんじゃないだろうか。もしディールが成立した場合、ロッキードの代理店の丸紅には莫大なカネが転がり込むからね。カネと国益とがお互いに関連している事件なのかもしれない、という印象を受けた。
ロッキード事件はバレなかったら何の問題もなかった事件だと思う。アメリカ政府もトラブルになるのを避けようとして、ロッキード事件の核心にせまるような情報はほとんど提供しなかった。これでP3Cの導入計画が駄目になったら大変だからね。アメリカが情報を出さなかったのでロッキード事件がどういう事件だったのか、という事の理解が遅れた、というのは相当あると思う。ロッキード事件が非常に注目を集めたのは、ロッキード事件がなんなのかよくわからなかったから、というのが大きい。種明かしをすればこういう事でした、ということなんだと思う。
汚職というのは私益のために国益を棄損するような行動をする、というのが一般のイメージだけど、案外そういうような汚職はそれほど多くないのかもしれない。政治目的を達成するために少し問題ある方法を使わざるを得ない事もあるだろうし、政治をするにはカネが必要。
きれいな政治を徹底すれば、何も出来ないで終わる、というリスクがある。一方でダーティーな政治をすれば、政治目的は達成されるかもしれないけけれども失脚して、志半ばで終わるというリスクがある。政治というのは大変だよね。
その一方で、闇勢力が政治と結びつくというのは本当に恐ろしい事なわけで、これは絶対に取り締まらないといけない。
政治家も司法官僚も、どっちも大変なんだな、と番組を見て思いました。