バブル期の日本と同様、いまの中国は過大評価されていると思う
21世紀は中国が世界の中心になる、というような話は、今考えてもやはり時代遅れだと思う。
中国についてどうしても考えてしまうのは、開放政策以前の中国でなにか世界が驚くような目覚ましい達成があったのか?ということだ。
冷戦時代のソ連には、もちろんいろいろな問題があったのだが、文化であるとか学問に関していえばソ連の水準というのは西側諸国と比べてひけをとらないものだったと思う。
しかし、冷戦時代に中国で文化的、あるいは学問的になにが達成されたかを考えるとき、正直なにも思い浮かばない。
冷戦時代に中国でなにが起きていたのか僕は何も知らないのだが(そして、それはとても興味深いテーマだと思うが)、当時の中国はというと、ただただ人々の生活水準を向上させることで精一杯な国、という感じがする。
もちろん、冷戦下の中国はソ連のように搾取できる衛星国を持たなかったし、何百年前にも及ぶヨーロッパ文明の伝統があったわけでもない。
しかし、それらを考えに入れても、冷戦下の中国は世界的には何もなかったと思う。
江戸時代の日本は鎖国をしながらそれなりに繁栄していたのに、いったい何なのか不思議だ。
僕が思うのは、冷戦下、あるいはそれ以前に中国は何もできなかったのに、なんでこれからの中国は世界の中心になるのか、ということだ。
日本には鎖国をしながらあれだけレベルの高い文明を300年間運営した実績があるので、没落をしてもそのうち復活してくるのは明らかである。
中国にはそのような実績はなにもない。
だから、昔だめだったら今もだめなんじゃないか?と思ってしまう。
最近、中国人が欧米のハイテク関連企業を大量に買収していることが問題になっている。
背景には、中国人が欧米のハイテク関連企業がもつ知財を盗み取っているのではないか、という懸念がある。
あれだけカネがあるのに、なんで自前でやろうとしないのだろうか?
海外から知財を持ってきたところで進歩は何もないし、カネが儲かるだけでおもしろくもなんともない。
まあ、日本の高度経済成長だってアメリカからの技術移転によってなされたという側面があるが、中国人による海外企業の買収は中国におけるクリエイティビティーの欠如を強く示唆する。
よく、特許の出願数、出版される学術論文の数、時価総額十億ドル(一千億円くらい)に相当する未上場企業の数(「ユニコーン企業」の数)が日本を上回った、日本は中国に負けた、という話を聞く。
バカじゃないかと思う。
中国の人口は日本の10倍あるのだから、本来あらゆる面で日本より規模が10倍でなければならないのだ。
ユニコーン企業だって、人口が十億人の国でそれなりに成功したら簡単にユニコーン企業になるだろう。
いまの中国の評価は明らかにバブルに基づく。
かつてのバブル時代に、日本が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれていたのと同じような雰囲気を僕はいまの中国の評価に感じている。
なんというか、カネはものすごいあるのは分かるのだが、実質がよく分からないのだ。
中国人の決断の大胆さを賞賛する「識者」は多い。
しかし、バブル期の日本企業だって有り余るジャパンマネーを背景にジャンジャンリスクを取っていたわけで、これが「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の根拠になっていた。
バブル期の日本はどんな下らないものでも値段がつく、チャンスに満ちあふれた社会だった。
そのことでさらに下らないものに値段がつきやすくなり、社会におけるチャンスの総量が増えるというサイクルが回っていた。
いまの中国と基本的には同じだと思う(バブルの影では少子高齢化が進行しているところも似ている)。
いまチャイナ・アズ・ナンバーワンといっている人たちは、むかしジャパン・アズ・ナンバーワンといっていた人たちと同じような種類の人たちなのではないだろうか。
当局の強権によってこのバブルを持続させることができるか、というのは興味深い問題だ。
しかし、もし持続できたとしても、バブルは所詮バブルである。
日本のバブルが続いたとしても日本が覇権国になる可能性があったなんていまいち考えられないように、中国が覇権国になるという議論は疑わしい。
僕は中国のバブルが崩壊して中国があっという間に没落するとは思わないが、今の勢いを続けるのは無理じゃないかと思う。
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