スマートフォンと全国制覇
今年の夏の甲子園は花咲徳栄の優勝という結果で終わったが、僕が興味深いと思ったのは花咲徳栄はスマートフォンが使える強豪校だったということだ。
花咲徳栄の生徒がスマートフォンを使っていたというのは個人的に納得がいく。今年の花咲徳栄は、テレビで見ていてもとても自然体だった。無駄な気負いなく完全に実力を出し切って勝った印象がある。
今年の花咲徳栄の優勝の仕方は、いかにもスマートフォンを使い慣れているスマートフォン世代のものだったと思う。多くの強豪校でスマートフォンは不安要因とされているが、逆にスマートフォンを味方に付けて勝ったのが花咲徳栄だったのではないだろうか。
その一方で、スマートフォンどころかテレビまで禁止の大阪桐蔭とか広陵はいまいちぱっとしなかった。特に大阪桐蔭は明らかに優勝した春の方が凄みがあったと思う。夏の甲子園では、確かにものすごく野球をやり慣れている感じがしたものの、凄みとなると今ひとつ伝わってこなかった。
大阪桐蔭と広陵はどちらも選手を徹底的に追い込むことで知られているチームだが、勝たなければ、という気負いのために集中できなくなったのかも知れない。そういう追い込みが大一番で強さとなって出るか、弱さとなって出るかは本当に紙一重だな、と思った。
今年の夏に放送された、清宮、安田、中村を特集した番組の録画を今になって見た。
番組では履正社の監督が出てくるのだが、自分で考えて練習するのが一番勉強になるとか、猛練習させて潰れた奴は切り捨てるというやり方はよくないとか、時代に合わせて指導者も進化していかないといけないとか、桑田真澄氏のようなことを言っていた。
安田本人も世間の持っているドラ一のイメージとはまるで違っている。日本史の偏差値は70あり、他の教科の成績もよいのだという。安田は本も読んでいるようで、松井秀喜の「不動心」を何度も読みました、と言うのだ。この何度も読む、と言うところに凄みを感じるのだが、今はそういう選手が大学に行かずに直接プロに行く時代なのである。
番組では広島の広陵高校にも取材に行っていた。広陵の中井氏がまず重視するのは人間としての成長だが、その教育観はかなり昔ながらのものである。親を大事にしろとか、野球用具の整頓を徹底するとかそういうことで、練習用のユニフォームなども先輩のお下がりである。広陵の練習用のユニフォームには背中にマジックで大きく名前が書いてあるのだが、ユニフォームが引き継がれるにつれて背中の名前が増えていくのだ。
これらは確かに広陵の強さを象徴しているが、正直、ここまですると逆効果なのではないか、とも思う。生徒の中には親とわだかまりがある生徒もいるはずだが、そういう生徒に「親を大切にしろ」といったところでなんの意味があるのか。生徒にお下がりを着せるのもあまり意味があるとは思えない。そういうことが本当に人間としての成長につながるのかなあ、と思うし、逆に無駄な気負いを負いやすくなって強さという意味ではマイナスなような気がする。プロだって別にお下がりを着ているわけではないし、スマートフォンどころかヒゲまで生やしている。
野球だけじゃだめ、人間として成長しなければいけない、というのは安田なども言っていることだが、その意味するところは中井氏とはかなり異なっているように見えた。
2007年の夏の甲子園で、広陵は10勝投手と日本代表の正捕手を揃えて公立高校に負けた。そして今年は髪形をクリリンみたいにして決勝まで来たのに、スマートフォン片手に坊主なのかも分からない髪形をして甲子園に乗り込んできた花咲徳栄に負けた。中井氏が生徒のために一生懸命やっているのは間違いないが、決勝での負け方を見ると、中井氏のアプローチにはなかなか難しいところもあるように思う。
広陵には批判があって、それは先行逃げ切りを狙うチームであるというものだ。つまり、中井氏のチームは「逆転のPL」のように、絶対に負けるはずのゲームをひっくり返して世間を熱狂させるようなチームではないのである。この事は中井氏の指導方針と無縁ではないと思う。
いま中井氏は55才だが、中井氏が監督をやっているうちに広陵が夏の甲子園で優勝できるのかどうかは興味深い。ここ最近の広陵は三年に一度くらい甲子園にくるので、あと3、4回くらいはチャンスがある計算になる。今後も中井氏がこれまでの方針を続けて三度目の正直になるのか、あるいは同じ事を続けて同じ結果に終わるのか。あるいは何らかの方針転換があるのか。それは誰にも分からない。
生徒を追い込むこと自体が間違っているわけではないと思う。大阪桐蔭は何回も優勝しているし、合理性や科学性を追求している履正社もまだ優勝はない。しかし、番組を見ていると、広陵の選手はどこよりも正しい生活をしているから決勝でこういう負け方をするのだろうか、と思ってしまうのも事実だ。
中井氏が監督を退任した後、次の監督が中井氏の野球をどのように総括するかが注目される。
番組では、今U-12日本代表の監督をしている元巨人の仁志 敏久氏にも取材をしていた。清宮らについて仁志氏は「気になる人がいても(欠点が気になる人に欠点を指摘されても)直さない方がいいと思います。入ってすぐにあれこれ言われておかしくなるのが一番よくない。これまで結果が出ているのだから、まずは自分の形でやってみて、それで結果が出なかったらそのときにどうすればいいかを考えればいい」と言っていたのでかなり驚いた。今の小学生の野球エリートは指導者のいうことを考えもなく聞くのは間違っている、という指導者から指導を受けているのだ。
ここでも重視されるのは「考える力」で、イマジネーションとクリエイティビティーがない選手というのは上のレベルではまったくの論外なのである。そして、このようなことをいっている指導者は仁志氏だけではないのだ。
ある意味アマチュア野球の世界は日本の未来を先取りしているのではないかと思う。あと十年もしないうちに、「指導者の言うことを考えなしに聞くのはダメだ」と考える指導者のもとで、スマートフォンを使いながら野球をやっている子供が社会の第一線に出てくるのだ。
スポーツ関係者というと、世間ではまだ合理性をまったく無視するようなメンタリティーを持っている人たちだという偏見があるが(そして、実際にまったく理不尽な事をしている指導者も少なくないのだが)、アマチュア野球でも上の方はとっくに変わっているのである。
そういう意味で、今アマチュア野球の世界で起こっていることはこれからの日本社会に相当影響すると思うし、アマチュア野球で行われている取り組みを見ていると日本の未来もそれほど悲観することはないかな、と思う。
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